インクルーシブコラム

障がい者の生活にある不便とユニバーサルデザイン

車椅子ユーザーと坂道

車椅子ユーザーは上り坂も下り坂も苦手

ある日、旭山動物園に行ったディーさん。動物の行動展示で有名ですね。名前の通り、山の山麓に作られた動物園。中は坂だらけ。さて、車椅子ユーザーのディーさんはどうやって動物園を巡ったのでしょう。ご存知のように車椅子は坂が苦手。よく段差があるところにスロープが作られていますが、力がある人でないと長い坂や急な坂は登れません。意外に知られていないのが、坂を下るのも苦手な車椅子ユーザーがいること。理由は、車椅子にブレーキはついていますが、急な坂や長い坂でスピードが出てしまうと止まれなくなることがあるため。

荷物をたくさん入れたキャリーバックやベビーカーでも同じようなことがありますね。普段の暮らしの中で、車椅子ユーザーにどんな不便があるのか考えてみること、そして、同じような状況が自分や周りの人にもないか考えてみると、いろんな状況や状態をイメージできるようになって、発想を広げるトレーニングにもなります。是非やってみてください。

車椅子ユーザーはどうやって坂を登ったのか

動物園と言えばフラットなイメージはありません。
それなりの広さの敷地が必要になる施設なので土地代を抑えるためにも丘陵地に作ることになるのでしょうか。
車椅子ユーザになってまもなくの頃、名古屋市の東山動物園に行った時は、そのアップダウンの多さに、二度と動物園には行かないと誓ったほどです。
それから10数年経った頃、北海道旭川市の旭山動物園がそれまでの「形態展示」から「行動展示」に切り替え入園者数が上野動物園を超えたと話題になっていました。
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その後車椅子バスケの関係で札幌へ行く機会があったので旭川まで足を伸ばすことにしました。
事前に調べてみると旭山動物園はその名の通り山の斜面にあるらしい。東山動物園の悪夢が頭をよぎるも覚悟を決めて旭川駅からタクシーに乗り込みました。「旭山動物園まで」と運転手さんに伝えると
「普通は正門入り口に向かうけど車椅子なら東門まで行った方が良い」とアドバイスをもらいました。
どうやら正門は山のふもと、東門は動物園の1番高いところにあるらしい。
東門に到着してみると入り口としてはこじんまりしているけれど、確かに園内全体を見下ろすてっぺんです。僕たちは入り口でもらった案内図を手に綿密な下りルートを計画し、雪豹の肉球を含め、お目当ての動物を全て見ることができました。そして閉園の時刻が迫り人もまばらになった正門まで下山すると帰りの予定時刻を伝えておいた運転手さんが笑顔で待っていてくれました。
上り坂も視点を変えれば下り坂なんだと当たり前のことに気づく貴重な体験でした。

インクルーシブデザイン・ソリューションズでは、障がいがありながら自立した生活を送っているリードユーザと協働することによって、さまざまな社会課題への気づきを誘い、イノベーションに導く、課題解決のレベルアップなどのサポートを行なっています。ここで、気づきを増やし、視点を拡大するためには観察の仕方や、気持ちの察し方のスキルが必要です。リードユーザのエピソードからどんな視点が必要なのか例をお示ししたいと思います。みなさんも是非考えながら、感じながらお読みいただき、視点を拡大していただければと思います。

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ディーさん

脊椎損傷、車椅子運転歴36年

車椅子ユーザーのディーです。
車椅子だから感じること、
車椅子だから見えること、
などなど
日々感じたことを綴ってまいります。

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