インクルーシブコラム

インクルーシブデザインの事例インクルーシブデザイン&デザイン思考

事例から考えるインクルーシブデザイン(1)

はじめに

 モノやサービスが溢れ、解決すべき課題が見つけにくくなっているのと同時に価値観も多様化しており、従来のマジョリティを狙ったマーケティングが通用しにくくなっていることは皆さん実感されているのではないでしょうか。VUCCA※とも言われ、不確定で変動の幅も大きくなってきており、未来を見通すことも難しい中、事業を変化に合わせて刷新していく必要があります。
 しかしながら、この変化の中、ユーザーの価値を見出すことはより難しくなっており、新たな事業・商品・サービスの創造は困難になっています。2000年くらいまでは、明確なニーズや価値を見出しやすく、目標設定が容易でしたが、さまざまな情報の氾濫と情報格差の拡大、SNSの普及が生む情報の分断、所得格差の拡大、こういったさまざまな要因で価値の多様化が加速しています。例えば、都市部では車を所有することは無駄と感じ、カーシェアを利用する方が増えていますが、車中心の地方では所有は必須です。価値の多様化が進むと見えている課題を解決するだけでは大きな市場を創造できません。商品やサービスの種類が増加傾向にあり、同時に個々のの売り上げは縮小していることがこれを示してると思います。
 また、SDGsの達成など企業の社会的価値を高めることも求められており、環境、人権などへの配慮など様々な要素も考慮に入れることが必要になってきています。事業を継続していくために解決すべき課題は増える一方です。

こういった困難を解決していくのに有効なツールとなるのがインクルーシブ・デザイン。目標はより多くの方に使いやすい、アクセス可能とすることですが、開発の初期段階、企画のプロセスから当事者を巻き込んでいくことが特徴。当事者の行動観察を行ったり意見を伺うことで、固定観念を打破し、視野を拡大することを可能とし、今まで気づかなかった価値に気づくことができるようになること、多様性を理解し様々な配慮を行うことが自然に身に付くなど、現在の状況を乗り切るためのスキルも身につきます。弊社では自立している障がい者や高齢者を養成プログラムを受けていただいたリードユーザを擁しています。リードユーザと共にインクルーシブ・デザインを実施することにより、単に障がい者や高齢者の不便の解決に陥ることを防ぐとともに視野を拡大することを可能とし、さらに、デザイン思考を組み合わせることで、斬新な発想を生み、複雑な課題を統合的に解決することを可能としています。
 インクルーシブデザインやデザイン思考は実効がないと考えていらっしゃる方もいるかもしれませんが、インクルーシブデザインもデザイン思考もツールです。これをいかに実効あるものとして使いこなし、新たな価値創造につなげていくかについてはまず本質を理解することが重要です。これはどんなツールでも同じですね。これからこのコラムで具体的な事例をお示ししながら、どうすればより効果的に使いこなせるかお伝えしていきたいと思います。

※VUCCA:Volatility(変動性)Uncertainty(不確実性)Complexity(複雑性)Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとったもの。変化が激しいため不確実性が増し、さらに複雑性が加わって未来予測が非常に困難な状況。まさに現在の状態を表しています。

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