インクルーシブコラム

インクルーシブデザインの事例インクルーシブデザイン&デザイン思考

事例から考えるインクルーシブデザイン(2) OXOのピーラー

関節炎を患う伴侶の行動観察から生まれたピーラー

みなさんは野菜の皮を剥く時にピーラーをお使いでしょうか?今回は身近な事例としてOXOのピーラーをご紹介したいと思います。ほとんどのピーラーがT字型をしているのに、OXOのピーラーはI字型をしている理由をご存知でしょうか?もしかするとすでにお使いの方もいらっしゃるかもしれません。OXO創業のきっかけとなった製品です。

OXOのルーツ
すべてはこのピーラーからはじまりました…
今から25年以上前、創始者サム・ファーバーは、関節炎を患う妻ベッツィがリンゴの皮をむくのに苦労している姿を見て 、なぜ身近なキッチンツールで手を痛めることがあるのだろう?なぜもっと使いやすいツールがないのだろう?と疑問を持ちました。それがきっかけとなり、サムはより多くの人にとってより快適に使える製品を開発できると確信したのです。そしてサムはベッツィにもっと使いやすいピーラーを作ることを約束したのです。大規模なリサーチ、100を超える試作品、幾度にも及ぶデザイン修正を経て、「GOOD GRIPS(グッド・グリップス)」シリーズとしてこのタテ型ピーラーを含む15のキッチンツールがアメリカでデビュー。人間工学に基づいたデザインは業界に新しい基準をもたらし、消費者が製品に求める「使いやすさ」「機能性」への期待を高める結果となりました。 タテ型ピーラーは現在でもトップセールスを誇る人気商品のひとつです。
出典:OXO HP “OXOの原点となった代表的商品”

関節炎のために指や手首を曲げることが困難な伴侶がリードユーザ(極端ユーザー)となって開発が進められています。注目すべきは、普通のT字型のピーラーが引いて使うのに対して、手前に引いても向こう側に押しても使えるI字型としたことです。これによって手首に負担をかけずに剥く対象を持つことを可能にし、同時に対象を持つ力が弱くても手の皮を剥いてしまったりする危険性を低減しています。単に伴侶の不便だけに注目していたらもっと特殊な形状になっていたかもしれません。関節炎を患う伴侶の行動観察から気づきを得て、そのまま不便を解決するのではなく、試作を繰り返しながら持ちやすさや使いやすさのリサーチを行うことで一般化し、より多くの人に使いやすいものに仕上げています。このように、リードユーザの行動観察から普通の人が見過ごしている不便を見出し、そこから、普遍的な課題、ピーラーで言えば、剥く対象物を持つ力が必要とか手首を曲げていないといけない、など普通の方でも”言われてみれば”と感じる課題に置き換えて開発が進められたことが成功の要因となっています。どの調理器具売り場にも必ずといっていいほど置いてあるOXOの製品、その創業の最初の製品がインクルーシブデザインで作られたことは興味深いですね。一度売り場で手に取って確かめてみてください。

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