インクルーシブコラム

インクルーシブデザインの事例インクルーシブデザイン&デザイン思考

事例から考えるインクルーシブデザイン(7)Appleのユーザー・エクスペリエンス 3

スマートフォンが登場する前の携帯電話、いわゆるガラケーとスマートフォンの違いはなんでしょう。タッチパネル式になって物理ボタンが消えた、操作方法が違う、といった見えるところだけでなく、基本的な製品のスタンスが異なっています。機能上画面が大きくなってネットを含めた様々な情報アクセスがしやすくなったことも大きいですが、革新的なのは一般の方にもアプリ開発の門戸を開いたことです。Appleから開発コードを入手して開発し、審査を受けてパスすれば”Apple Store”で誰でも手に入れて使うことができるようになります。それまでは、キャリアーが開発したものしかインストールすることができませんでしたが、これによって、様々な方々がそれぞれの視点や価値観でアプリ開発を行い、結果として多様な人々の多様なニーズに応えることが可能になるプラットフォームが形成されました。
数社の企業のリサーチや努力だけでは行き届かないところも、これによって補完されるだけでなく、無限とも言える広がりを産んでいるのはご存知の通りです。人それぞれのニースに対し、数多くのアプリから選びとることによる究極のカスタマイズを可能としています。その後Andoridなどでも実施されていますが、Appleの強みは、スマホ、アプリ、オペレーティングシステム、さらには連携する機器類まで一括してAppleが開発・管理していること。これが、結果的にアプリの動作不良や機器連携などに課題を生じにくくし、機器に詳しくない方にも使い易いものにしています。Apple製品はカスタマイズできない、詳細な設定が自由にできないなどの課題を詳しい方が指摘されることもありますが、”○○をしたい、できるようになりたい”という目的で使う分には機器に詳しくなくても使うことができ、さらに様々な方々が作成したアプリで充足されることで、多様な方の使いやすさや目的の達成を包括しています。これは、当事者が開発・企画の段階から参画し、包括していくインクルーシブ・デザインそのものとも言えますね。次回は、なぜAppleだけがこれを始められたのか、この世界観を作り上げられたのか、について取り上げたいと思います。

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