今ではすっかりお馴染みになっているグラフィックユーザーインターフェース(GUI)。GUIの言葉自体は馴染みのない方もいらっしゃるかもしれませんが、パーソナルコンピューター(PC)のソフトやスマートフォンのアプリを操作する時に使うアイコンのことです。マウスなどでカーソルを動かしてクリックしたりドラックすることで直感的な操作を可能としているGUI。当時の極端ユーザーであるコンピューターに詳しくない一般の方も包括していく、まさにインクルーシブ・デザインです。
マウスの発明はスタンフォード研究所のダグラス・エンゲルパートによって発明され、GUIは1963年にアメリカの空軍のシステム「SAGE」で初めて採用されました。これを一般向けのコンピューター、いわゆるPCに初めて採用したのがAppleです。というより、「パーソナルコンピューター」の概念を形にしたのが、1984年に発売されたMacintoshです。それまで、コンピューターといえば、プログラミングのプロやマニアが使うものであり、一般の方が使うという概念がありませんでした。それをマウスとGUIの組み合わせで操作することで、詳しくなくても直感的な操作を可能にしたのです。インターネットもメールも一般的でなかった時代に、その可能性に気づき製品として発売する、とてもすごいことですね。
当時GUIを開発していたゼロックスに市販の意識が全くなかったことからも当時の「コンピューターはプロが使うもの」という固定観念がどれだけ強いものであったのかわかると思います。今はスマートフォンにも使われていて指で操作するというさらに簡単な操作を可能としているGUI。固定観念を壊すこと、極端ユーザーに着目し、そこから発想していくことがイノベーションにつながるとても良い事例ですね。次回もAppleについて取り上げてみたいと思います。
参考:The History of Jobs & Apple 普遊舎 2011