デザイン思考の”デザイン”とは、広義のデザインで、目的達成のために様々な制約条件や環境要因を俯瞰的に踏まえて全体を設計し、具体的な形を与えていくことを指します。
社会課題の解決、経営課題への対処、組織改革、新規事業や商品・サービスなど、様々な場面で”デザイン”することが重要になっています。どんな社会、企業にしたいのか、どんな”体験”を提供したいのか、制約条件、ユーザーの真のニーズ、世の中の動きを含めた環境要因、使えるリソースなどを俯瞰的に捉えて踏まえながら、具体的な形にしていくのが”デザイン”です。
例えば、どこにいても好きな音楽を聴き続けたい、というニーズに対し、再生専用のコンパクトな音楽再生装置とヘッドフォンの組み合わせで答えたのが1979年に発売された初代Walkmanです。歩きながらでも出先でも好きな音楽が聴けることを携帯音楽プレーヤーというモノに結実させることで”デザイン”しています。大切なのは、”携帯音楽プレーヤーをデザインした”のではなく”どこにでもすきな音楽を聴けること”をデザインしたことです。その具現化する一つのアイディアが携帯音楽プレーヤー、と捉えると、アイディアはこれ以外にも考えられるようになります。
Appleは、どこにいても好きな音楽を聴きたい、というニーズを拡張し、iPodとiTuneの組み合わせを使って”自分の音楽ライブラリー全部を持ち歩いて、いつでもどこでも聴けて購入もできる”という体験をデザインしました。さらにiPhoneとして、音楽も含めて情報を持ち歩けるところまで進化させています。
モノの形や見た目を作る狭義のデザインと違い、広義のデザインは、”コト”を実現するために具体的な”モノ”として形を与えることを意味します。この”モノ”は無形のサービスなども含まれます。”コト”をどのような形で実現するか、これがデザインのもっとも大切なことです。
例えば、鉛筆。書くこと、と捉えるとPCやスマホでもできる”こと”になりますが、白い紙にだれでも絵や文字で自由に想いを表現できる”こと”と捉えるとまた違った見方ができると思います。こういった身の回りにあるものの”デザイン”を考えてみませんか?今のお仕事が、どういう”こと”をデザインしようとしているのかを考えるのも良いと思います。楽しみながらデザインを考えられるようになると、よりデザイン思考への理解も深まると思います。