インクルーシブコラム

障がい者の生活にある不便とユニバーサルデザイン

車椅子ユーザーと新幹線の多目的トイレ

車椅子で東海道新幹線に乗るなら11号車に


車椅子ユーザーである僕は、東海道新幹線に乗るときは11号車に乗ります。
理由としては

  • ・乗降口ドアの幅が広く、デッキも広い
  • ・車椅子でも利用できるトイレがある
  • ・多目的室(個室)がある
  • ・オープン席(三列席の通路側席を無くした席)がある


まあ、車椅子で快適に利用するための設備が集中しているから、というわけです。席を予約する時は、オープン席を取ります。個室は孤独だし、他の乗客を観察するのが好きなので。
でも、当日飛び込みで乗車するときなどオープン席が空いてなければ、11号車のデッキで過ごすことも、しばしば。
そんな時、僕の役割となるのが多目的トイレ ドアボタンの説明員。

  • ・緑色の輪っかの中に「<>」の表示が「あける」
  • ・赤色の輪っかの中に「><」の表示が「しめる」
  • ・「<>」ボタンを押して、ドアが開いたら中に入り、中の「><」ボタンを押すと、ドアが閉まります。

わかりにくい多目的トイレの開閉ボタン

言葉で説明すると、なんの問題もありませんが
実際にドアの前に立つと、二人に一人はアタフタ。
そんな時は、説明員として「左手の緑のボタンを押すとドアが開きます。中に入ったら、中の赤いボタンを押すとドアが閉まって鍵がかかります。と声をかけます。
観光シーズンなど、名古屋-東京間で多いと10人くらいサポートします。
なぜ、こんなにも分かりにくいのか

  • ・電動ドアだということが分かりにくい。いかにも手で開けて、という凹みがドアにあって初めて使う人は必ず手で開けようとする。
  • ・ボタンに見えないボタン。緑と赤の輪っかは目立つけど、それが何なのか分からない。一応、「あける」「しめる」と書いてはあるけれど緑地、赤地に黒で書いてあるので、まあ読みづらい。ボタンかな、と思った人も、緑や赤の部分を押す人が多い。惜しい! そっちが目立つけど、中心の「<>」「><」がボタンなのです。

あと危険なのが出てきた人と、入れ違いで中に入った時電動ドアだという認識が無いとドア内側の、いかにもな凹みに手をかけなんとか閉めようとする。そのうちタイムオーバーで、自動でドアが閉まる。これで一件落着、とはいきません。内側の赤いボタンでしめないと、施錠されません。つまり、外側の緑ボタンを押されるとドアは無情にも開いてしまうのです。

多目的トイレでの悲劇?

一度だけ、その悲劇に遭遇したことがあります。

70代位の女性がドアの前まで来た時タイミング良く(悪く?)ドアが開き、中から人が出てきてその人と入れ違いで女性は中へ。案の定、アタフタしているうちにドアは閉まり、無施錠の状態に。用を終えるまで誰も来ないことを願っていたのですが同じような年代の女性がドアの前に立ち慣れた動作で緑ボタンを押す。ドアが開ききる前に、外の女性はそっと赤ボタンを押し静かに立ち去って行きました。

その時の僕はというとオープン席で、車椅子から座席に移りたまたま開いていた客室ドアから、ソワソワしながら眺めていました。まもなく客室ドアは閉まり、その後の事は分かりません。
説明員は非番でした。

7月から運行が始まる新型車両N700S。
トイレのボタンは改善されてないようです。

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ディーさん

脊椎損傷、車椅子運転歴36年

車椅子ユーザーのディーです。
車椅子だから感じること、
車椅子だから見えること、
などなど
日々感じたことを綴ってまいります。

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