実績のご紹介

コニカミノルタ株式会社様

インタビュー者写真(鈴木様、長田様)
「新しい価値の創造」という経営理念のもと、お客様や社会にとっての新しい価値を創造・提供し続けるコニカミノルタ株式会社様。製品・サービスのデザインを担うヒューマンエクスペリエンスデザインセンターにて、ワークショップを実施いただきました。

人・社会を起点に考える

−リードユーザ活用のきっかけと目的を教えてください

インタビュー者写真(長田様)長田様:ヒューマンエクスペリエンスデザインセンター(以下HXデザインセンター)では、様々なデザインに取り組んでいます。
今デザインの世界は、プロダクトデザインやUIデザイン※1から、「体験」をデザインするUXデザイン※2へ拡大を続けています。いかに課題を発見し、どのように新しい価値をユーザーへ届けるか。その一連の創造をユーザーの体験として描きだすことのできる、デザインの力に注目が集まっているのを感じます。
その折に、インクルーシブデザイン・ソリューションズと出会いました。リードユーザを通じた問題提起型のデザインプロセスへの共感が、今回のプロジェクト発足のきっかけです。
弊社では製品の評価プロセスにおいて、障がいをお持ちの方にご意見を伺っています。例えば、取っ手がしっかり握れるか、車イスの高さから操作画面が見えるか、などについてです。しかし、製品の基本構想が固まった後ですと、せっかくいただいたご意見を反映できないことがありました。
一方でインクルーシブデザインは、デザインプロセスの上流から障がいを持った方を含む多様な人材をチームに巻き込むアプローチです。様々な手法を試すうちのひとつとして、とにかくチャレンジしてみようという気持ちが強かったです。
また、弊社のユニヴァーサルデザインの取り組みとして、IAUDへの参画があります。この活動が上手くいけば、名古屋で開催される国際ユニヴァーサルデザイン会議で、成果を出展できるかもしれない。そんな期待も抱いていました。


−ワークショップの感想をお聞かせください

鈴木様:この活動で最も良かった点は普段は深い関わりをもたなかった人と一緒にチームを組み、行動できたことです。

長田様:今はまだ、簡単にスタートできる活動ではないですからね。リードユーザと同じ場に立つことにすら、現状は様々な壁があります。まずその一歩を踏み出すことが大事だったと思います。

鈴木様:私にとってインパクトがあったのは、ワークショップの中で下半身不随の車イスの女性と一緒に行動をした時のことです。
女性同士だったのでお手洗いに行く際のお手伝いをさせていただいたのですが、日々の生活の中でどれだけの不便や、工夫があるのかということは、ただお話をするだけでは知ることのできないものでした。生活の一部を垣間見ることで多くの学びがあって、まだまだ知らないことがたくさんあるのだと身をもって知ることができました。そこから意識も変わり、例えば点字ブロックでもあの人だったらこう思うのではないか、など他者の視点を意識するようになりました。

長田様:私も同じような実感があります。
今までも白杖を持った方への対応は、知識として理解していたつもりでした。しかしリードユーザと長い時間を共にすることで、初めて目の見えない世界を自分事として考えることができるようになりました。

鈴木様:このプロジェクトでは、様々な人と同時にコミュニケーションをとることの難しさを実感しました。普段接することの少ないリードユーザや、異なる仕事をしている開発者では、それぞれ話の伝え方や粒度がちょっとずつ違います。そのなかで意見をまとめて合意形成をはかっていくことに、難しさも感じました。

長田様:視覚障がいの方と話しているときに、つい「この絵が」と言ってしまうことが何度もありました。伝えることの難しさを痛感しました。その点でワークショップ最後の寸劇を使ったプレゼンテーションは、誰もが参加しやすい共有の方法だと感じました。演劇形式のプレゼンテーションは、アイデアの共有やチームワークの場づくりにとても有効ですね。

他者の視点を持つことで自分ごとになる

−お二人が感じられたワークショップの成果は?

インタビュー者写真(鈴木さん)鈴木様:一番の成果は、私自身のマインドが変わったことです。以前より、リードユーザの視点で物事を見ることができるようになったと感じます。ある場面においては私が極端ユーザーやリードユーザになることもあるのだな、と気づくこともできました。例えば私は背が高い方ですが、キッチンの高さが他の人より低く感じてしまったりして、日常の中で誰かが「一般」から外れることもあれば自分が外れていることもある、そういうところに気づくことができるようになりました。「もし私があの人だったら」、「この場合であったら私は」という思考が深まったように思います。
そこがこのプロジェクトを通して、私がもっとも成長した部分だと思います。この思考は、社会人生活においても大いに役立つもので、様々な立場の人がいる会社の中で提案を通すには、多くの視点で捉えられることが重要であると実感できたように思います。

長田様:企業はものやサービスを通して、社会全体に良い影響を与えていかなければなりません。しかしデザイナー個人としては、“誰を幸せにできるのか”という視点を大切に、世の中を変えるチャレンジをしていきたいです。チャレンジの方法はまだ全然見つかっていないのですが(笑) 。
今回のワークショップに参加した開発者からも、「多くの刺激を得られた」という前向きな声があがっています。デザイナーはデザインだけ、開発者は開発だけに携わっていても、世の中のニーズは拾えないし課題は解決できないと思うのです。お互いの対話があって、共感があって初めて解決していけるものだと思います。

「未来を覗くワークショップ」で社会を変えていけたら

−今後のリードユーザ活用の可能性を、貴社・社会両面でお聞かせください

鈴木様:なるべく若いうちにこのような体験をし、多くの視点を身につけられると、後にすごく活きてくると思います。新入社員研修や、もっと早くて高校生でも良いかもしれないですね。

長田様:社会課題の発見から事業を創造できる姿を目指したいというHXデザインセンターの思いがあり、それを全社にも発信しています。それには、課題発見力が問われてきます。今回の活動の知見を是非活かしていきたいです。
また、会社の中だけで閉じてしまうのはもったいないとも感じています。
我々企業だけではなく、社会全体を変えていかなければならないと思います。個々人の理解から、サービスやソリューションが自然に生み出される仕組みができたら良いと思います。
今回のワークショップの際に、リードユーザが今抱えている問題は、10年後、20年後に多くの人が直面する問題だと教えて頂きました。しかし多くの人がこの問題を認識できていません。第一歩として興味を持てたら自分ごとになれると思うので、そこにもアイデアが必要ですね。

鈴木様:多くの人に興味を持ってもらうためには、例えば「未来を覗くワークショップ」など、誰もが自分ごとと捉えられるようなワークショップを開催できるといいですね。活動が広く社会に知られ、社会全体で未来を考えることができたら素晴らしいと思います。

長田様:いいアイデアだと思います。
私たちが新しくサービスを考えるとき、ストーリーを立ててその人の生活をストーリーに落としこむというプロセスがあります。サービスの始まりからハッピーな終わりまでを物語にして伝えるのです。
「未来を覗くワークショップ」が実現したら、もっと世界を俯瞰してみたいですね。多様な人、一人ひとりにフォーカスを当てて、生まれた瞬間から死ぬ時までの長いストーリーを描いてみたい。そこから誰もが過ごしやすい未来の都市を描いていくのも面白そうです。かなり壮大な話ですが(笑)。

※1 UIデザイン…ユーザーインターフェースの略。人とものが接触する部分を意味する。
※2 UXデザイン…ユーザーエクスペリエンスの略。人が物やサービスを通じて得られる体験を意味する。

コニカミノルタ株式会社
1873年創業。世界50ヶ国に拠点を持ち、世界中のオフィスで活躍するデジタル印刷システムなどの情報機器、産業用材料・機器、ヘルスケア製品など、各事業分野で高品位の製品とサービス・ソリューションを提供しています。今後も様々なビジネスシーン、ライフシーンに感動をもたらす新たなイノベーションを生み出す企業として進化し、成長を続けていきます。

テクノロジーレポート2018年版(vol.15)
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