実績のご紹介

サイボウズ株式会社様

インタビュー者写真(小林様)

「チームワークあふれる社会を創る」を企業理念に、チームワークを支えるソフトウェアを開発し、多くの企業に提供されているサイボウズ株式会社様。アクセシビリティの重要性を社内で広く理解してもらう活動として、リードユーザ活用のワークショップを実施いただきました。

アクセシビリティの重要性を知ってもらいたい

−リードユーザ活用のきっかけと目的を教えてください

きっかけは私がアクセシビリティ※1の担当となった2014年、公開型のユーザビリティテスト※2と自社の取り組みを話すイベントで、インクルーシブデザインを知ったことです。それまでも社内でアクセシビリティへの理解を促す活動をしていたのですが、説明するだけでなく実際にユーザビリティテストを多くの人に見てもらうことが、より共感を得やすいという実感はありました。そのためリードユーザと一緒にワークをする、その体験がさらに有効ではないかと。
また、アクセシビリティが重要だということは弊社の社員も理解はしているものの、具体的な問題点は見えていないんです。リードユーザに目の前で使ってもらうことで、少しでも問題点が明確になれば良いと思いました。

ワークショップは、3回に分けて実施しました。ユーザビリティテストだけでなくオフィスの問題点も見つけてみようと、オフィス内に加え地下のコンビニや駅など周辺のエリアもリードユーザと一緒に周りました。参加者は開発だけに限定せず、営業や総務・人事など他部門のメンバーにも参加してもらいました。アクセシビリティというと開発だけに関わるように思われがちですが、最終的には営業が商談で話すことにつながりますし、人事は雇用を考えていく上でのヒントにもなりますからね。


—ワークショップの感想をお聞かせください

発見がたくさんありました。オフィス内外では日頃気に留めないようなところが、実は別の方にとっては重要なことや困ることだったり、また改善のヒントになる意見もたくさんあり面白かったですね。例えば、このオフィスは7階でエレベーターを乗り換えます。7階からオフィスまでは6基のエレベーターがあるのですが、音声案内があるのは1基だけ。今までは全く気づかなかったので、いかに視覚に頼って生活しているかがわかりました。またオフィスビル地下のテナントショップが入っている階では、床がツルツルして反射しています。車イスの方は通行しやすいけれど弱視の方は反射して動きにくく、どちらを優先させるべきなのか、とか。私はWEBアクセシビリティの仕事で視覚障がいの方と接する機会はこれまでもありましたが、日常生活というシーンにおいては全く気づいていなかったことも多く、驚きの連続でした。
ユーザビリティテストに関しては、目的のひとつでもあった社内啓発という点において、とても手応えを感じました。
リードユーザ、いわば特殊な利用方法のユーザーが実際にどのように利用しているのかを目の当たりにすることで、単純に製品の問題点を炙りだすよりも印象が強かったと思うんですよね。例えば、画像が非表時の際の代替テキストやページの見出しの重要性、そしてキーボード操作時の不具合だったり。
プロダクトのコンセプトや要件を決定する、プロダクトマネジメントというポジションがあるのですが、そこではこのワークショップ後アクセシビリティを取り入れていこうという動きになりつつあります。新しく開発するものは要件定義段階から取り入れていこうと。また弊社は基本的に長くサービス提供させていただいている製品が多いのですが、そのような製品も少しずつ、例えばデザインを刷新するタイミングで取り入れようという声があがるようになりました。

−このワークショップの成果は?

目的であった啓発という点では多くの社員にアクセシビリティを知ってもらえたということ。一部の限られたメンバーだけでなく、開発の中でもデザイナー、プログラマー、プロダクトマネジメント、ドキュメントやヘルプを作成するメンバーなど、様々なポジションのメンバーに知ってもらえて、その必要性を理解してもらえたというのがひとつの大きな成果です。その上で、濃淡はありますが製品に直接反映できるものや挙がった問題点を要件にして直すなど、プロダクトによって具体的に進められているケースもあります。これまでは、アクセシビリティに関してはデザイナーが個人的に意識する程度でしたから、大きな一歩だと思います。

誰のためのアクセシビリティなのか

インタビュー者写真横(小林様)ただアクセシビリティについて、これは決して障がいがある方のためだけではないのですが、その理解をしてもらうまでが大変だと思っています。私自身、初めは障がい者対応という意識でアクセシビリティを始めていますから。弱視の方のユーザビリティテストを見て、その方々のために改善しなければと思う、そのような発想自体は間違っていないと思います。ただ、その方々のためだけではないという発想にたどり着くまでが難しいですね。基本的に開発はターゲットユーザーを決めて、誰にどんな価値を届けるのか?という考え方をしていきます。ほとんどの人に価値があるものを提供していく中で、「誰に」の一例を挙げるとそれだけになってしまうような気もして、そのあたりをどううまくコミュニケーションしていくかということが難しいなと日々感じています。
私自身の考え方が変わったのは、弊社の企業理念を考えた時です。企業理念は「チームワーク溢れる社会を創る」ことで、そのためにグループウェアやスケジューラーを開発しています。そこでアクセシビリティを考えると、ユーザーは製品、例えばスケジューラーにアクセスしたくてスケジューラーを利用しているわけではないですよね。それはあくまでも手段であって、目的はチームメンバーの予定を共有して効率的に業務を行うため、などチームに貢献するためのものです。チームにアクセスできる、その能力がアクセシビリティだと考えた時に、初めて障がい者のため、という考えから明確に切り離すことができました。私たちが対象としているのはチームに入りたい人。そこに高齢者、障がい者、外国人という線引きはなく、チームに入りたい人か否かだけが基準となるので、チームに入りたい人のためのアクセシビリティなんだという考えに行き着きましたね。

−今後のリードユーザ活用の可能性と貴社の展望を教えてください

サイボウズという会社においては、まだまだたくさんの気づきを与えてくれる存在だと思います。弊社は自分たちの製品を自分たちで利用している会社なので、社員はその製品をものすごく使いこなしているヘビーユーザー。ある意味とても閉じているので、その考え方を広げていかなければいけないと思っています。そのためにも自分たちと全く異なるバックグラウンドを持ち、全く異なる使い方をする人々と接していくことで、普段開発しているなかでは全然気づけないことにたくさんの発見があると思います。
弊社も「多様性」という言葉はとても大事にしています。働き方なども自由に選べますが、まだ均一性が目立ちます。もちろん制度も考えてはいますが、考えているのは社員なので、その枠からはみ出せていないんですよね。
私たちが意識していないところでたくさん問題があり、本当は直面しているはずです。このビル内で数時間リードユーザと行動しただけで、たくさんの問題が出るくらいですから。普段自分たちが考えられないくらい色々な問題に直面しているはずです。
ほとんどの人が気づかないところに、本当は社会全体としてとても重要な問題点やヒントがあって、それが様々な製品やサービスなどをつくっていく、設計していくときに大事な役割になっていくと思います。

※1アクセシビリティ…障がい者・高齢者を含め「すべて」の人が製品・サービスなどにアクセスできること
※2ユーザビリティテスト…ユーザーにWebサイトを操作してもらいながらWebサイトの問題点を抽出する手法のこと

サイボウズ株式会社
1997年の創業以来チームワークを支えるソフトウェアを開発し続け、現在の契約社数は80,000社を超えています。
またソフトウェアの開発だけにとどまらず、働き方改革の推進や地方創生の支援など、あらゆる手段で社会のチームワーク向上を目指しています。

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