実績のご紹介

株式会社鉃鋼ビルディング様

インタビュー者写真(石橋様)

東京駅に隣接し企業や飲食店、クリニックなどのテナントを、日々多くの方々が利用する鉃鋼ビルディング。関連会社やテナント企業と一緒にリードユーザ活用のワークショップを実施いただき、その気づきを元に施設を改善。より多様な方々に配慮されたビルへと生まれ変わりました。

誰もがストレスなく利用しやすい環境の実現に

-リードユーザ活用のきっかけと目的を教えてください

この鉃鋼ビルディングは1951年に建築された従前のビルを建て替え2015年に竣工したのですが、その際ユニバーサルデザイン(以下UD)を取り入れ設計したものになります。
私自身、元々UDに関心があったのですが、その後インクルーシブデザイン(以下ID)を知った際に、UDとIDは根本的な違いがあると知りました。UDは設計者があらゆるニーズを想定し設計するもの、IDは障がいを持った方など多様な方々が設計段階から携わるということ。
そこで、UDを取り入れた当ビルにおいて、また日々の多様な方々の利用において足りないところはないかを検証するために、リードユーザの方に来ていただいてワークショップを行うことにしました。


—ワークショップの率直なご感想をお聞かせください

まず一番驚いたのは、障がいをお持ちの方の非常に優れた感覚です。
私は視覚障がいの方と一緒にワークショップを行ったのですが、我々が普段気づかないことにたくさん気がつくんですね、ただ歩いているだけでも感覚がまったく違う。例えばとても耳がよく、エレベーターの昇降方向の案内をした際には既に音で理解されていて、目が不自由であってもそれ以外の感覚が非常に鋭く、素晴らしい能力をお持ちなのだと実感しました。

設計段階から多様な方の意見を取り入れることが大事

-石橋様が感じられるワークショップの成果は?

インタビュー写真(石橋様横)当ビルはまだ竣工後2年しか経っていません。UDに配慮して設計したこともあり、実は参加するまでは、特に問題点は見つからないだろうと思っていました。多目的トイレ設置はもちろん、スロープの傾斜への配慮や段差をできるだけ少なく設計し、避難階段以外の階段は作らず…と。
しかし、リードユーザの方にたくさんの意見を聞き、大変多くの気づきがありました。
まず一番に指摘を受けたのが、一般のお客様も多く利用する1階と地下1階に設置した行き先を示す立看板です。こちらは利用するお客様がわかりやすいだろうと設置したのですが、これが視覚障がいの方や車いすの方には非常に邪魔になると。確かに言われてみれば邪魔というご意見は理解できるのですが、指摘されるまでは気づきませんでした。これはすぐに撤去し、現在は天井と壁にそれぞれの行き先をわかりやすく掲示し、暗めの照明の場所はスポットライトで読みやすくしました。天井と壁に案内掲示したことで、邪魔にならないだけでなく、遠くからでもどの方にもわかりやすくなったと思います。
また、ワークショップはビルの外でも行ったのですが、駅まで歩いた際に点字ブロックの行き先が視覚障がい者も利用しやすい券売機ではなく、通常の券売機だったんです。そのようなところでも設計段階から多様な方の意見を取り入れることが必要だと気づかされました。非常に参考になりましたね。
その後いただいた意見を参考に参加メンバーで見直しを行い、デザインの議論などで5ヶ月ほどかかりましたが、可能な限り様々な改善を実施しました。

ただ今回は物理的な改善だけでなく、これだけ多くのスタッフに意識づけができたことがもっとも大きな成果と言えます。私自身もですが、リードユーザに指摘されないと気づかないことがたくさんありましたから。


—今後のリードユーザ活用の可能性と貴社の展望を教えてください

日本のランドマークともいえる東京駅に隣接している当ビルにおいて、入居されている企業や店舗、海外からの出張の方や、ビルを利用されるあらゆる方がスムーズに来られ、安心して過ごし、働ける環境を提供し続けることが必要だと感じています。
今回のワークショップでは、テナント企業やビル管理関連の協力会社にも参加いただいたこともとても有意義であったと思います。
より多くの方が多様性を受け入れられる、そのような理解度を深める発信地としてこれからも存在していきたいですね。
私はこのワークショップ参加後から、例えば階段を見ると車いすなど他の立場の方から見たこの設備はどうなんだろう、改善点はないかと当ビル以外でも非常に気になるようになりました。リードユーザからの意見を参考に、一人ひとりの意識を変えていくことも大切だと思います。

株式会社鉃鋼ビルディング
1888年創業の増岡商店を前身とし、1949年創業。2015年、第一・第二鉃鋼ビルディング跡地に、オフィス棟となる本館とサービスアパートメント・ラウンジ・フィットネス・店舗・空港リムジンバス発着場を備えた南館を基壇部がつなぐ複合用途棟が新たな鉃鋼ビルディングとして竣工。創業以来当地域に根差し、人と街、時をつなぐ使命をもって、全ての利用者により快適で安全な環境を提供しつづけます。

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