実績のご紹介

法政大学様

「体験」が当事者意識の醸成へ

インタビュー者写真(南雲様)創立138年の歴史を刻む法政大学は、これまで培ってきた「自由と進歩」を基礎に、15学部を擁する日本有数の総合大学です。近年はダイバーシティにも力を入れている当校において、学生たちの理解と学びの深まる体験型講座として、インクルーシブデザイン・ソリューションズの講演+ミニワークショップを実施しました。

体験型講座が学生たちの学びを深める

−インクルーシブデザインのワークショップ活用のきっかけと目的を教えてください

法政大学の学生センターでは、学生たちが自由に受講できる課外講座を毎年選定しています。これまで色々な講座を選定してきましたが、一方的な講義ではなく体験型で、なおかつ今の時代に合ったものが良いと探していました。学生たちが実感できる講座じゃないとなかなか気持ちには届かないですからね。
そのような時に、同僚がインクルーシブデザイン・ソリューションズ(以下IDS)の体験会に参加したため話を聞いたところ、障がいを持った方と一緒に街を歩き、一緒に街の問題点を考えるというプロセスが今までになくとても良かったと。それを法政大学の学内や近隣の商業施設、また神楽坂などで実践し、リードユーザと一緒に学生が学内施設や街の問題点を考えられたら、今までにないとても良い取り組みになると思いました。
リードユーザとともに、学内の環境を改善していけたら学びも非常に大きい上に、学生の自主性にもつながると思ったんです。
ただ学費で運営していることもあり、予算が合わずそのプログラムは断念せざるを得なかった。その代わりにリードユーザとの共創とはどういうものかという講義と、簡単な体験をセットにしたものならどうかとIDSから提案をもらい、その内容で実施することにしました。


−ワークショップの率直な感想をお聞かせください

ワークショップの時間では、リードユーザの立場になってお菓子のパッケージの改善点を考えるという内容でした。参加学生としては、言葉で伝えることの難しさが身にしみたのではないかと思います。ただ私自身は、予算や時間の関係もあって難しいとは理解していても、学内施設の問題点解決をと考えていたので、学内のこととは違う題材に正直ものたりなさを感じでしまいました。考え方は同じであくまでも題材のひとつとはわかっているのですが・・・。学生たちの気づきの部分でも、どこまで深く考えられる題材だったのだろうかと。
1時間半という短い時間の中で、リードユーザへの理解とワークショップの両方なので難しいかもしれませんが、もう少しワークショップに比重を置いた方が、より気づきを得られるのではと思いました。
ただその後興味を持ち、自主的にIDSの体験会に参加する学生もいるなど、総体的には狙いどおりの良い講義でしたので、また来年も選定したいとは思っています。


−時間的制限など、ものたりなさを感じた中でも南雲様が感じられた成果は?

今まで障がいを持った方について理解を深める場は、話を聞くだけの講座しかなかったのですが、今回はお菓子のパッケージを開けるときに、片手で開けてみる等、やはり体験の要素があるのが良いと思いました。障がいを持った方と一緒に行動し、一緒にアイデアを出すというプロセスは、当事者意識が養われますし、地に足がついたアイデアになると思います。
他者から言われたことをそのまま鵜呑みにし、何か起きた時にその話だけで判断するのではなく、自分の目で確かめて当事者となって体験し、問題点を考える、学生たちにはそのように物事を考えて欲しいです。
それがプロセスに組み込まれているので意識せずとも体現できるというのが、個人的には良いところだと思いましたね。

共創の概念は被災地支援にも

–今後貴大学において、また社会全体でリードユーザ、IDS活用の可能性はどのようにあると思われますか?

インタビュー者写真(南雲様横)大学が新しい施設を建てる際、通常大学の施設部と建設会社とで話を進めますが、その際にリードユーザの視点や学生の視点を取り入れられるような取り組みが、IDSの手法を使えばできると思います。例えば、施工業者や建設会社に模型を作ってもらい、リードユーザや学生に施設を使う際に、弊害になることやより良くできることはないか、などをレビューしてもらうようなプロセスを組み込み、建設段階から意見を取り入れていくなどです。

また法政大学では東日本大震災以降、毎年夏休みに被災地支援として現地に行っていますが、被災された方々と一緒にIDSの手法を使って課題解決をしていくこともできるのではないでしょうか。
現在、被災地では仮設住宅から公営住宅に移り住む段階で、仮設住宅の時にようやくできたコミュニティが、またバラバラに分断されてしまっている状態です。
しかも仮設住宅の時は外部の団体が色々なイベントなどでコミュニティ形成を支援していましたが、今はかなり少なくなってしまいました。公営住宅に移られた方もコミュニティの形成ができていないと話されていました。
そこで例えば、コミュニティの場について被災された方々と東京の学生が一緒に考える等、実際に生活する人と、まっさらな立場の若者がIDSの手法を使って街のために一緒に考えられたら素晴らしいですね。
様々な立場の方がみんなで問題点を洗い出し、良い環境を創っていくことができれば、多様性の理解に大いにつながります。学生にとってもすごく勉強になりますし、ただのボランティアではなくなる、そんなことが実現できたら良いと思います。

法政大学
1880年、東京法学社として創設。創設以来、「自由な学風と進取の気象」を校風とし、近代日本社会の建設に向けたリベラルでプログレッシブな教育と研究を展開しながら、「自由と進歩」の建学の精神を培ってきました。伝統に甘んじることなくさまざまな改革・挑戦を続け、現在は15学部38学科を擁する日本有数の総合大学となり、幅広い学びのフィールドを展開しています。

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